カカクコムがLiPLUSホールディングスを43億円で買収! 不用品回収・ホームサービスM&Aの狙いとシナジーを徹底解説

株式会社カカクコム(以下、「カカクコム社」といいます。)は、不用品回収や庭の手入れなどのハウストラブル解決を含む多岐にわたる生活領域において、ユーザーと専門家・プロフェッショナルをマッチングするサービスを展開する株式会社LiPLUSホールディングス(以下、「LiPLUSホールディングス社」といいます。)の全株式を取得し、子会社化することを発表しました。本稿では、LiPLUSホールディングス社が掲げる事業内容やM&A戦略、そしてカカクコム社とのシナジー効果、さらに買収金額や資本市場の観点からの分析を通じ、このM&Aの狙いと意義について専門家視点から解説いたします。

■1.LiPLUSホールディングス社とは

LiPLUSホールディングス社は、「不用品回収」「お庭の手入れ」「ハウストラブル全般への対応」をはじめとする生活領域の幅広いカテゴリーにおいて、ユーザーと各分野のプロフェッショナルをつなぐプラットフォームを提供・開発している企業です。同社は約24,000店にも及ぶ多数の専門業者・事業者とのパートナーシップを構築し、日本全国に向けてサービスを展開している点が特徴です。これにより、ユーザーにとっては信頼できるプロを簡便に見つけられる利便性が向上するとともに、専門業者にとっては新規顧客との接点を創出し、ビジネス拡大の機会が得られる双方にメリットのあるサービスモデルとなっています。

■2.カカクコム社とのシナジー効果

今回のM&Aによって、LiPLUSホールディングス社はカカクコムグループの一員として事業を推進することとなります。実際に発表されているシナジー効果としては、下記のポイントが挙げられています。

  1. デジタルマーケティングの知見共有
    カカクコム社は、「価格.com」や「食べログ」など、日本を代表する比較・口コミプラットフォームを長年運営してきました。その過程で蓄積されてきたデジタルマーケティングやSEO、UX・UIの最適化などのノウハウは非常に大きな強みと言えます。LiPLUSホールディングス社にとっては、これらの知見を吸収しながら、自社のサービスをさらに成長させる土台を得られるメリットが期待されます。
  1. 生活領域ジャンルの新規展開
    カカクコム社は「価格.com」内に新たに生活領域の総合型サイトを設ける方針を表明しており、LiPLUSホールディングス社が保有する約24,000店ものパートナー事業者とのネットワークが同サイトに取り込まれることで、ユーザーに対するワンストップ・ソリューションが実現しやすくなります。たとえば、一般消費者の視点では、「不用品を処分したいが、どの業者に頼むのが最適か分からない」「庭の手入れをしてほしいが、費用や品質を比較検討したい」など、日常生活で頻出する疑問点や課題を「価格.com」という巨大プラットフォーム上で完結できる可能性が生まれます。
  1. クロスセル・アップセルの可能性
    ユーザーが不用品回収サービスや庭の手入れ等を検索する際、関連する製品やサービスの提案も行いやすくなります。カカクコム社は多種多様なサービスカテゴリーを抱えており、これらとLiPLUSホールディングス社のサービスとを組み合わせたクロスセル(相互販売)やアップセル(上位サービスの提案)が期待できます。

上記のように、カカクコム社にとっては生活領域という巨大な市場に参入しやすくなる点が大きな魅力であると同時に、LiPLUSホールディングス社にとっては膨大なトラフィックを誇る「価格.com」などとの連携を通して認知度拡大と事業の効率化を図れる、双方にメリットのあるM&Aだと考えられています。

カカクコム社は、自社のコア事業を拡大していく方法として、水平型M&Aと垂直型M&Aの両面を意図した戦略を明確に打ち出しています。水平型M&Aとは、同業種・類似業種の企業との統合や買収を通じてシェア拡大やスケールメリットを得る手法です。一方、垂直型M&Aは、バリューチェーンの上流もしくは下流に位置する企業を取り込むことで、サプライチェーン全体の効率化や一貫サービスの提供を目指すものです。カカクコム社の場合すでに幅広い生活領域ジャンルを扱っており、今後は同様のサービスを扱う他社との統合(水平)や、新たな周辺サービス・プロセスの取り込み(垂直)を組み合わせることにより、さらなる事業拡大を実現する計画をIRにて表明しています。

■3.買収金額とその背景

ssカカクコム社が公表した資料によれば、今回のM&Aにおける買収金額は約43億円(アドバイザリー費用4,300万円を含む)であるとされています。また、LiPLUSホールディングス社の2024年7月期における純資産は16億円とされており、差額である27億円近くを営業権(のれん代)として計上する見込みです。資料上では、EBITDA(税引前・金利前・償却前利益)が約4.8億円と試算されており、約5年程度でのれんを回収できる計画とのことです。

一般的にのれん代は、被買収企業が有形資産(純資産)では測りきれないブランド力、顧客基盤、技術力、人材などの無形資産に支払われる部分とされています。LiPLUSホールディングス社の場合、約24,000店のパートナー企業とのネットワーク、そして「生活領域におけるユーザー課題解決プラットフォーム」というビジネスモデル自体が高く評価された結果、のれん代が一定のボリュームを占めることになったと推察されます。カカクコム社は、その無形価値を今後の事業拡大に活かすことで、5年間程度で投下資本を回収し、かつ投資を上回るリターンを得ることを目指していると言えます。

■4.時価総額から見るM&A戦略のポイント

今回のM&A金額(約43億円)は、カカクコム社の時価総額である約4,300億円(2023年時点)に対して、実に1%程度の規模にとどまります。カカクコム社にとっては比較的小さな買収額でありながら、生活領域という巨大市場への本格参入機会を得ることができるため、効率の良い投資と言える面があります。

一方で、買収する側(カカクコム社)と買収される側(LiPLUSホールディングス社)との企業規模の差に注目すると、M&Aの交渉過程においては「どの企業が買い手に回るか」が売却価格に大きく影響を与える可能性が高いとされています。一般的には、買い手企業の時価総額が売り手企業の時価総額の数十倍を超えると、大きなディスカウント(買収価格が低めに抑えられる現象)が起きにくくなる傾向があると言われます。その理由として、巨大企業は財務的にもM&Aに充てられる資金が十分にあり、また買い手による一括買収やシナジーを見込んだ資源投下が比較的容易に行えるため、売り手企業としては「自社の価値を適正に評価しやすい」土壌が整いやすいからです。

加えて、IPO(新規上場)と比較した際、M&Aによるエグジット(事業売却)を選択する経営者も少なくありませんが、その際には「どの企業が自社を買うと最もメリットが大きいか」を意識しておくことが、売却価格を高める上でも重要なポイントになります。つまり、自社を買収する可能性のある候補企業を予めピックアップし、その企業の時価総額を把握しておくことで、将来的にM&Aを行うか否か、あるいはどのタイミングで行うかなどの戦略的な選択肢が変わってくる可能性があるのです。

今回のLiPLUSホールディングス社がカカクコム社に売却されたケースにおいても、売り手にとっては「価格.com」や「食べログ」を運営する知名度の高い企業であり、かつ財務力のある相手を選んだことで、事業シナジーを期待できるだけでなく、売却金額についても一定の評価を得られる取引となったのではないかと推測されます。

■5.今後の見通しとまとめ

総括すれば、これまで家電や保険、あるいは外食などの比較サイトイメージが強かったカカクコム社が、生活領域における実用性の高いサービスと連携することで、利用者のライフスタイル全般に寄り添う多角的なプラットフォームへと進化し得る節目のM&Aと言えるでしょう。今後、同様のプラットフォーム型企業が、水平・垂直の両方向にM&Aを展開する流れは、生活関連サービスのみならず他の領域でも注目される可能性があります。

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<本記事のまとめ>

  1. LiPLUSホールディングス社の特徴
    不用品回収や庭の手入れなど、幅広い生活領域でユーザーと専門家をマッチングするプラットフォーム事業を展開。約24,000店の豊富なパートナー事業者を擁し、今後も水平型・垂直型双方のM&Aによる事業拡大を計画。
  2. カカクコム社とのシナジー
    カカクコム社のデジタルマーケティングノウハウや「価格.com」の巨大ユーザー基盤との融合により、生活領域分野の総合サイトを形成し、クロスセルやアップセルも期待。カカクコム社にとっては生活領域への拡大、LiPLUSホールディングス社にとっては認知度・集客力向上が見込める。
  3. 買収金額とのれん代
    買収金額は約43億円で、LiPLUSホールディングス社の純資産16億円との差額の約27億円がのれんとして計上される。EBITDA4.8億円から逆算して約5年で回収を試算。無形資産(ブランド・顧客網)を評価しての投資と推測される。
  4. 時価総額を踏まえた戦略的考察
    カカクコム社の時価総額4,300億円に対して1%程度の投資であるため、財務的に大きな負担とは言えない。買い手企業の規模が大きいと、ディスカウントが起きにくいこともあり、LiPLUSホールディングス社にとっては魅力的な買収相手となった。M&Aを検討する企業は、どの企業が自社を買う可能性があるか、その時価総額はいくらかを事前に研究することが重要となる。
  5. 今後の展望
    カカクコム社が保有するプラットフォーム資源とLiPLUSホールディングス社の専門サービスとの相乗効果により、生活領域という巨大市場でさらなるユーザー獲得が期待される。のれん代の回収計画(約5年)においても、シナジーの発現が早ければ投資回収期間を短縮できる可能性がある。両社の連携により、水平・垂直方向に広がるM&A戦略の推移が今後ますます注目を集めそうである。

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プライマリーアドバイザリー株式会社

代表取締役 内野 哲

※本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的・税務的・会計的・戦略的アドバイスを提供するものではありません。具体的なM&A案件においては、必ず公認会計士、税理士、弁護士、金融機関その他の専門家に相談したうえで、最終的な判断を行うようお願いいたします。

プライマリーアドバイザリー株式会社
代表取締役CEO 内野哲
M&A仲介、M&Aアドバイザリー/当社は「経済産業省中小企業庁 M&A支援機関登録制度」に登録しています。情報交換やお問い合わせはこちら:
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